お気楽に、きらきらしたものを集めます。管理人名前=きらく。かわいいグッズに目がない。一応大学卒業が決定したらしい。


by kirakirakiraku
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2005年 06月 26日 ( 2 )

(前のつづき)

 集会所にはまだ誰も居なくて、静かで暇だったのでAさんにメールした。カバンを守ってくれてありがとうと書いた。すると集会所のドアが開く音がして、Aさんも集会所にやってきた。隣にちょこんと座るAさんは、本当に普通の男の人だった。エキセントリックだった数ヶ月前の姿が、嘘みたいに男っぽくなっていた。その後Aさんはちらっと携帯電話を見て、やっと私からの携帯メールに気がついたみたいだった。「携帯メールを打つのは苦手で、口頭で返事させてください」という。そうだったのか。今まで相当長いメールをくれていたけど、無理させていたのかなぁとちょっと思って申し訳なかった。それとも、本来の姿に戻ったのかなぁ。普通男の人は長文メール打たないしなぁ。

 集会所の本棚にあった本を読んでいると、隣でAさんが絵画評論の本を読み出す。私は、Aさんの、医学生なのにこういう本を読むところが好きだ。私はどの本にも興味がわかず、中年の小説家がトルコ風呂で出会った女にハマっていくという刺激的な小説(何故そこにあったのか)をパラパラめくったりしていた。そういえば、長崎の大学から来た医学生が酔いながら昨夜Aさんに言ってたっけ、
「Aさんって変わってるよな。休学しても風俗に行かないのが変わってるよ」
って。休学したら普通風俗に行くのか、男は。その方がよっぽど私から見たら変だけど。
でもそれに対して、
「いや、私は大塚愛の・・・ですから」
と、手で二つの丸を作って返したAさんはやっぱり変わっているよ。自分はチェリーなんとやらであるという意味らしい。あ、Aさんの名誉のために言えば、彼は中性的で、芥川龍之介系の、文学青年をそのまま絵にしたような魅力ある美青年ですが。

 そのあと集会所で私達は眠ってしまい(徹夜した後静かに読書なんかしてたら寝るのは当たり前である)、朝ごはんの時間になって目が覚めた。そのあとはバタバタしていて、直接話はほとんどしなかった。
 そしてまた私達の学校のチームは、揃って地元に帰還したのだけど、帰り道ずっと私は、Aさんのことを考えていた。どこか心に違和感が残る。

 思ったのは、Aさんはピーターパンみたいだったなぁということだ。
 でも、私達はいつまでもネバーランドにはいられない。

 無邪気で頼りなくて個性的で危なかったAさんも、いずれ普通の大人になるんだろうか。
 お金や仕事や、女のことで忙しくなって、もう私としりとりやにらめっこをしたりはしてくれなくなっちゃうんだろうか。全く実用的ではない小説を読むのをやめて、大事なものをしっかりその手で守る男の人になるんだろうか。自転車を全速力で漕ぐのをやめて、自動車に乗って、チェリーなんとやらをやめて、お金で女の人を買えるようになっちゃうんだろうか。
 私が会いたいと言っても急には会えない、忙しい社会人になるんだろうか。

 突然忙しくなる生活や、唐突に始まる数人での臨床実習にAさんが馴染めるかどうか、凄く心配な一方で、彼が出会った時と比べて劇的に変化していることに対する切なさが拭いきれない。

 出会った頃、私はAさんのことを好きになりそうだった。
 でも彼がピーターパンだから怖かった。その気持ちを抑えた。
 だけどむしろ、もはやピーターパンじゃなくなったAさんを、好きになれるかはわからない。
 いや、本当は、どっちのAさんも凄く好きで、でも新しいAさんは手の届かないところに行っちゃう気がして、どうしていいかわからない。


 ねぇウエンディ、ピーターパンが大人になってしまうよ、どうしよう。
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by kirakirakiraku | 2005-06-26 23:45
 木曜は3時間睡眠の後20時間ほどぶっ続けで図書館に残って缶詰になり、なんとか企画書を完成させ提出。その後、すぐに午後7時から激しい飲み会。ただ呆然としながら、企画書を作り終えた達成感に酔った。

 次の日は朝7時30分に部長からの電話で目が覚めて、7時50分までに準備をして1泊2日の合宿へ。合宿場所は熊本、阿蘇。到着したらすぐに部活動を行う。さらに夜9時から懇親会という名のバカ騒ぎ飲み会が開始された。

 熊本には、知り合いが何人か来ていた。その中でも、ずっと話をしたかったAさんと落ち着いて飲み始めたのが夜12時くらいから。Aさんとは出会って以来、何度かメールのやりとりをしていたが、実際に会うのは数ヶ月ぶりだった。 

 Aさんはちょっと変わったお人で、私のような素人が見ても個性的な性質を持っているとわかる。そういうのが苦手な人もいたようだけれど、私は彼の雰囲気が凄く好きだったから、また話せるのが嬉しかった。Aさんと私はたわいもない事で徹夜した。一人、二人と飲み会の会場から去っていく中、私とAさんはずっと、しりとりとにらめっこをしながら話をしていたのだった。朝が来て、二人で散歩に出かけることになった。5時くらいだったか、朝日が見えていた。

 熊本、阿蘇の雄大な風景は、同じ田舎ではあっても私の暮らしている所とは違う。大好きな紫陽花が咲く道を、Aさんと二人でのそのそ歩いた。
 実はAさんは、今まで病気で学校を休んでいた。それが、来月から学校に復帰されるとのことだった。以前は病気のせいか薬のせいか、少し普通とかけ離れた点が多かったけれど、今回会ったときには普通になっていて、回復したんだなぁと思った。Aさんが復帰できることは、私にとっても凄く嬉しかった。(ちなみに余談だけど、別の日に日記で書いた、学校を去った友人も、新しい大学に無事合格したようで本当によかった)
 ただ、夜中じゅうずっとニコニコしていたAさんだけれども、7月から学校に復帰する話の時だけは、明らかに不安そうだった。これからはとても忙しくなるから、そう簡単には会えないだろうと言う。

 医学生というのは普通、忙しいものだ。そうそう遊んで暮らすわけにもいかない。でも今までのAさんは違った。学校を休んでいる間、Aさんは本を読んだり、イルカと戯れたり、自転車を全速力で漕いだりして、優雅に暮らしていた。そんなAさんのメールはいつだって個性的で、ぶっ飛んでいて、楽しかった。
 それなのに隣にいるAさんは今、私達「忙しい医学生」の一員にまた復帰しようとしている。以前は一緒にいてもボーッとしていて、押したら倒れてしまいそうなフラフラした人だったのに、しっかり自分の足で立って、ちょっと重い私のカバンまですっと持ってくれていた。

 30分ばかり歩いたところで、来た道を引き返すことにした。私は地元での多忙な生活を思って、帰りたくないような気がした。Aさんの実家が田舎だという事や、私の生活する地元には本屋がないから、本好きのAさんには耐えられないだろうとか話しながら、光が雲間から漏れ出す空と、山の麓まで平らに広がる田んぼを見て歩いた。

 阿蘇の山は、偽物の映画セットみたいで不思議だ。山があるのに木がなくて、平面的に緑色がついていて、光の当たり具合ではおもちゃみたいに見える。ふと、そんな山に、虹がかかっているのが見えた。薄い薄い虹だったけど。わぁすごいと騒ぎながら、さらに来た道を引き返していると、雨がポツポツと落ちてきて、そのうちザァザァ降り出した。私とAさんは、着ていた上着を頭に被って、でも走ることなく来た道を戻った。

 頼りなかったAさんは、自分の大きな上着の下にしっかりと私のカバンを隠してくれた。濡れそぼりながらも、一緒に歩くのは楽しい。やっと宿泊所に戻ったが、誰もまだ起きていなかった。男の人と女の人でコテージが別れていて、共同で使える集会所がついているタイプの宿泊所だったので、そこで別れて私は集会所に行き、ぬれた服を取り替えた。急いで家を出てきたから、寝巻きしかなかったけど。
(次につづく)
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by kirakirakiraku | 2005-06-26 23:44 | ひと